ケータイ小説 野いちご

私、今から詐欺師になります ~番外編、その後~

割引券をもらいました

 



 図書館での仕事帰り、茅野(かやの)が夕暮れの街を歩いていると、
「あれー? 茅野さん?」
と声がした。

 顔を上げると、淡い色のスーツを着た品のいい男が前から歩いてくるところだった。

「お久しぶり。
 最近、店来ないじゃないですか」
と言われて、ん?と思う。

 ……誰だっけな、この人。

 店……。

 店?

 茅野がきょとんとしているのがわかったらしく、男は、
「メリケンサック買って以来ですよねー」
と笑って言ってきた。

 ん? と茅野は一歩、男に近づく。

 秀行(ひでゆき)が居たら、
「不用意に男に近づくなーっ!」
と叫び出すところだ。

「いやー、あんまり近づかないで」
と男は後退しながら笑う。

「ストーカーみたいなお宅の旦那に」
と言いかけ、いや、元旦那か、と言い直す。

「狙われたくないから」

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