夏休み目前。

冷房設備のない教室は、蒸し返ったような暑さ。

私は、去年買った五線譜と音符が描かれた下敷きをパタパタさせて、暑さを凌いでいた。


背中あたりまで伸びた髪が汗でベットリしていて、気持ち悪い。

私は、髪の毛をいじる。


そろそろ切ろうかな……。


そのとき、教室の扉が開いた。


「あー、ごめん!待たせた?」


私の友達…今居麗香(イマイレイカ)だ。


「もー、遅いよ麗香」

「ごめんごめん!

やー、音楽室に携帯忘れちゃっててさあ」


麗香はよく、忘れ物をする。

昨日も数学の教科書を忘れて、隣のクラスの子に借りていたし、

その前は体操服を忘れていて、体育は見学していた。

「早く帰ろう」

私はそう言って、机の横にかけていたバッグを肩にかけた。

「うん」