螢side

3日後、哀川さんはもう完全復活した。
「凄いね。」
「元から風邪は治りやすい体質なの。」
「へぇ。」
ルンルン気分でキッチンに向かう哀川さん。
その姿に少し安心する。
哀川さんが寝込んでいた間、家事とか頑張ったけどうまくいかないことが多かった。その度に澄を呼んで手伝ってもらった。
弓景先輩とかも家に押しかけてきそうだったから色々うまい理由考えてあきらめてもらった。やっぱりルームシェアしているということをバレたくないから。
哀川さんが寝込んだままだったらきっと身の回りのことはこれからも全部自分でやることになっていただろう。それは無理だ。3日前の看病のこともあったけど、僕の家はほとんど両親が甘やかすような感じだったから家事は出来ない。

まぁ、哀川さんが元気になってくれたのは少し嬉しいかな。



「ねぇ、哀川さん。」
「ん?あっ!そうだねっ!」
右手を差し出すとキッチンからパタパタと戻ってきてくれる。
「だいぶ慣れてきたね。」
「緋山君のおかげだよ!ありがとう。」
「……っ。」
とてもいい笑顔で、そして面と向かって言われると照れる。しかも、前に澄に指摘されて自分の感情に気づいたばかりなのに。
「…………僕の方こそありがとう。」
「!えへへ、なんかお礼言われると嬉しいなぁ。」
「そう。」
そしてまたいつも通りの日常が始まる。