宮殿内の立ち入り可能な部屋を見て回り、フリードに協力してもらってなんとか清掃スケジュールを決めたシルディーヌは、団長部屋に来ていた。

外はもう日が傾き、窓から差し込んだ夕日が部屋の中を橙色に染めている。


アルフレッドは、書物を棚に戻しているところだった。

プラチナブロンドの髪が橙に染まっていて、なんだか別人に思える。


「……今度はなんだ? 膨れたアマガエルぶりは、朝よりひどいぞ」


アルフレッドは、シルディーヌの顔を見るなり眉間にシワを寄せる。

たいそう不機嫌そうだが話は聞いてくれるらしく、ソファに座るよう顎で促した。

シルディーヌは向かい合って座りざまに、握っていた拳を開いて、前にあるローテーブルをバシッと叩いて身を乗り出す。

アルフレッドは怯むかと思ったがそんなことはなく、眉ひとつ動かさずにシルディーヌを見ている。

しばらく睨み合うも、アルフレッドの無言の圧力に襲われ、勢い込んで言うつもりが消沈してしまう。

だが、ここで引き下がるわけにいかない。

ガタイのいい屈強の男ばかりいる宮殿は、女性にとってどれだけむさくるしいか。

アルフレッドにしっかり伝えると決めたのだから。