キーンコーンカーンコーン、と。
チャイムがなり、ゆっくりと立ち上がった。
向かう場所はただ一つ。
あれから、あの日から。
何も変わらないままの生活を過ごしている。
あの日にあったことはあまり覚えていない。
気がつけば、マンションまで葵が送ってくれていて、そして、そのまま別れた。
ただそれだけ。
それはきっと、葵なりの気遣いだったのだろう。
だが、だからといってあの日のことがなかったことにされるわけではない。
表向き、私たちは何も変わっていない。
以前と同じように集まって遊んだり、勉強したり、何も変わらない日常である。
だが、きっと水面下では千景や葵が動いているのだろうとは思う。
だけど、私たちは変わらないという選択をした。
まだ、その時じゃないと判断したから。
海里あたりが聞いたらきっと逃げだと皮肉げに笑うだろう。
だけど、それでもよかった。
たとえ逃げだとしても、最後に終わればいいだけのことなのだから。