「え、シンガポールにいたんですか?」


「そうそう。だから三回忌行けなくて。すっかり遅くなっちゃった」



親父の元部下である尾家さんは、「柳井さん久しぶりです」と言い、仏壇のりんを鳴らし、手を合わせた。



相変わらず、親父は鋭い目を俺らに向けてくる。


でも、その奥には相手を想う気持ちがあったことを後で知った。



「良一くんももう高3かぁ。かなりカッコよくなったねー」


「え。そうっすか?」


「あの時は思春期まっさかりって感じだったよ」


「恥ずかしいんでその話はパスで……。あ、コーヒー淹れてきますよ」



いやいや、格好良くなったのは俺じゃなくて尾家さんの方だ。



親父が倒れた時、ボロ泣きしていた姿とは正反対。


海外勤務を経て、出世もしたらしく、自信に満ちあふれたいい表情をしている。