午後の授業が終わって、掃除の準備をする。
とは言っても、終わり次第下校って感じだから
掃除をやらずに帰る人が多い。
実際、掃除道具を持ってるのは一人二人くらい。
私は階段の担当だから、急いで階段に向かった。
まぁ、急いだところで……
誰もいないんだけどね……。
いつものことだから、気にしてないけど。
掃除用具入れから箒を取り出そうとすると、
後ろから誰かの手がのびてきた。
「ひっ……!」
「あ、驚かせた?
ごめん」
「……矢代くん」
振り返った時、そこにいたのは、悠里くんだった。
「またそれか……」
「え?」
「いや、なんでもないっス」
悠里くんは雑巾を手に取ると、
ふぅ、と息をはいた。
「いつも、一人でやってんの?」
「……え、うん…。
牧野さんも、森田さんも、矢上くんも、
みんな、帰っちゃってるから…」
ぎゅっと箒を握り、そう言った。
あ、しまった。
これじゃあみんなを、
悠里くんを、責めてるみたい。