……っあー、クソ、いってぇ……

俺は車で当てられた脇腹をさすりながら、遠ざかる車を見送る事しか出来なかった。

俺の中じゃ市木がすぐ変装を見破って、悲鳴上げて、近くの交番の警官が来て即逮捕って算段だったんだが……さすがに無理だったか。


「時流様!どうなさいました、何やら騒音が聞こえましたが……」


執事服の男がバタバタと駆けてきた。

……蝶野?

さっきのが変装した他人なら、こっちが本物か。

いや、もしかしたらこいつも偽物って可能性も無くはない。

俺はみょっと蝶野の頬を抓る。


「いっひゃ?!何するんですか、時流様!」


ふむ……変装じゃない?

じゃ、最後に確実に本物かどうか分かる言葉をかけてみるか。


「……兄貴の馬~鹿」


途端に蝶野のこめかみに青筋がビキビキと立つ。


「……ってえっつってんだよ調子のんな時流!!」


ゴン!