「さ、着いたぜ」


車を降りて顔を上げると、そこはお化け屋敷みたいな廃ビルだった。

スプレーの落書きや蔦が壁にあって、お世辞にも綺麗とは言い難い。

小薗江さんはジャケットのポケットから、ジャラリとした重そうなものを取り出した。


「その服によーく似合う洒落たアクセだ。付けてやるよ」


手錠……

抵抗する暇もなく、私の手首に銀色の鎖がかけられた。

ヒヤリと冷たいそれは、両手の自由を奪う。

何がアクセよ。趣味の悪い。


「それから、余計な言動は控えるように。ちょーっとでもなんか言ったり動いたりしたら……分かってるよね?」


トン、と小薗江さんの人差し指が私の額を小突いた。


「……」


今はこの人の言いなりになるしかないみたい。

彼の仲間が何人いるかまだ分からないし、向こうに残った時流様を再び狙ってるかもしれない。