「もう、最高に楽しかったぁー」
「恵もかぁ! 俺もすっごく面白かった。なぁ、マスター」

幸助は叔父の周りをキャッキャッと声を上げて走り回る。
ゲートであれだけ文句を言っていた叔父も上機嫌だ。

「おお、『モグ・ホール・アドベンチャー』最高だったな」
「うん、前の車の兄ちゃんと姉ちゃん、チューしてたよなぁ」
「おお、あれは、ビックリしたな」

叔父が赤面している。海外生活が長かったのに……けっこう純情。

「次は何にする」と叔父が園内マップを眺める横で、恵が一拍遅れて「あっ!」と声を上げる。

「それって、カップルに人気の! 私も乗りたかったのに」

『乗る』の単語に胃液が逆流する。
ウップと口を押え「僕はもう何も乗らない」と宣言する。

「それより、俺、腹が減った」

幸助の言葉に叔父はマップから腕の時計に目を移す。

「もう、一時前か」
「あっ、あそこ空く!」

恵の指した先に白いガーデンテーブルがあり、タイミングよく家族連れが立ち去るところだった。

恵と幸助の行動は早かった。タッチの差でその席をゲットした。

「グッジョブ」と叔父が指を立てると同時に、「……お前ら、元気だな」と僕はその席に崩れ落ちるように座る。