バーベキューは車で一時間ほど行った岡崎家の別荘で行われることになった。

『本当にすまないね。ありがとう。是非、家を使ってくれたまえ! 茜と健太をよろしく!』

岡崎父の盛大な感謝を有難く受けた結果だ。

『別荘近くの美味しいお肉屋さんから、お肉をいっぱい届けてもらうからたくさん召し上がってね』

岡崎母のお陰で肉も腹一杯食えそうだ。

二人の心遣いは、全て娘と息子のためだ。健太にその思いが伝わるようにと思いながら、僕たちは叔父と逢沢さん、二台の車で出発した。

車が行き交うゴミゴミした街中を過ぎ、まだ水の張られただけの田園を抜ける。

「もう、田植えの時期なんだな。ゴールデンウイーク辺りかな」

叔父の言葉で窓を開けると反対側を美山も開ける。
爽やかな風が車中を駆け抜ける。

気持ちいい。

その後、車は清流沿いに山間に入る。
舗装道路が、若葉色に彩られた山中を僅かに傾斜しながら真っ直ぐ空へと伸びている。

「まるで天空へ誘うような道だね」

美山の言葉に、フト高村光太郎の『道程』が浮かぶ。

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 僕の前に道はない
 僕の後ろに道は出来る
 ああ、自然よ
 父よ
 僕を一人立ちにさせた広大な父よ
 僕から目を離さないで守る事をせよ
 常に父の気魄を僕に充たせよ
 この遠い道程のため
 この遠い道程のため  ―高村光太郎『道程』より―

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僕の父は……あの空の彼方にいるのだろうか?
そこから目を離さないで僕を見守っていてくれるのだろうか?

もし、そうなら……嬉しい。