22✕✕年 春

ここは日本。中央部。前は千葉県と呼ばれた場所だ。今、日本は得体の知れないバケモノと戦っている。

2020年
この年はオリンピックがあったらしい。
もう、思い出せない。
美しい桜だけ覚えている。

それは突然来たのだ。

2020年冬。

その日は雪が降った。たくさんたくさん。
大雪だ。だが。その瞬間は突然来たのだ。
雲が一瞬にして消えた。晴れわたったのだ。突然だったので驚き、空を見上げたものも多かっただろう。
だが、喜びの声も悲しみの声もすべて黒い物体が降ってきた瞬間。

絶望の声に変わったのだ。

黒い謎の物体が晴れ渡った空から降ってきてそれに人が触れれば人はバケモノになってしまう。触れられない雪。黒き雪。

私は逃げた。急いで屋根のあるところへ。

私は絶望した。絶望しかなかった。

黒き雪は屋根までも溶かしていた。

人は逃げられぬ檻の中に閉じ込められた。
コンクリートだけが溶かされなかった。
その時人々は感じた。
死と生。今自分たちは隣り合わせだと。

そして私は黒き雪に触れた。『死んだ。』と目を瞑った。

私は死ななかった。私は私とバケモノと分離したのだ。
私はバケモノから逃げた。死を恐れて。
バケモノはバケモノを吸収する。
そして今。私のバケモノは …

世界を驚かす巨大な、日本の半分ほどの大きさきなった

私とバケモノは、感覚、五感が全く同じなのだ。

だから。

どちからが死ねばどちらかが死ぬ。

だがお互い

自分からは死ねない。

地獄の始まりだった。私は歳を取らなかった。

年をとっていないの気づいたのは五十年ほど生きた時。

背が変わらなかった。
髪が伸びっぱなしなのに。
手の大きさが変わらなかった。
シワが出てこなかった。15歳のまま。

アイツも同じだ。私が手を刺した日。アイツは刺した右手を使わなかった。

アイツが死にかけた日。私も苦しかった。

だから私は。私を殺してくれる人を探す。
アイツか、わたしが死ぬ日まで。