「…完成よ。」

溜め息混じりに呟いたのは、白衣を纏った30代前半の美しい女性だった。

コトリ、机にオシャレな茶色のフレームメガネを置く。

「ふぅ‥」

ひどく疲れた様子だった。

肘を机に置き、眉間を指で挟んで俯く。

コンコン、研究室のドアをノックする音が聞こえ、応答を待たずに青年が入ってきた。

「シェリル博士、お疲れ様です。」

「…あぁ、ありがとう。」

そう言って、シェリル博士と呼ばれた女性は、差し出されたコーヒーを受け取った。

「彼はどうです?」

「…ええ、まだ起動しないわ。
少し時間がかかるようなの。」

そう言って、シェリル博士は全身をチューブに繋がれた美しい少年を見つめた。

「そうですか。
彼が上手くいけば、博士は有名人になりますね。」

青年の言葉に、シェリル博士は苦笑した。

「有名になる為に彼を作った訳じゃないわ。人間が救うには限りがある災害者を救う為よ。」

それを受けた青年は、お見逸れしましたとでも言うように「そうでした。では、僕はこれで…」と言って、博士の研究室を出て行った。