「…っ」
気づいたら知らない教室に寝そべっていた。
どうやら寝ていたみたいだ…。

って、ここどこだ?
教室なのに机も椅子もない。
辺りを見渡すと、俺の他にも人がいることに気がついた。
しかも何人も。
すると、となりにいた女に声をかけられた。
「あの、あなたも[GAME]の参加者ですか…?」
[GAME]。ああ、思い出した。
俺は[GAME]参加者の抽選で見事(?)選ばれて…
もう、諦めるしかない。きっと…
「…はい。東京都の野田です。俺、突然ガスマスクみたいなのつけた奴が訪ねてきて、そこで意識失ったんです。もしかして、あなたのところにも…」
「来ました!…やっぱり、そうなんですね。信じたくなかったけど…。あ、私は福島の星野瑠奈です。」
その後彼女は、ここにくるまでの話や、俺が目覚めるまで他の起きてる奴らと話していた事などを話してくれた。
それによると、話した人たちのところには全員ガスマスクの“奴”が来たらしく、俺と同じく[GAME]参加者に選ばれてしまったらしい。そしてみんな、ここの教室に見覚えはないという。さらに、お互い面識は無い。
違っていてほしいけれど、やはり[GAME]が行われるということなのだろうか…?
どこかは知らないがここが[GAME]の会場となり、ここにいる全員が選ばれし参加者たちと考えるとしっくりくる。
と、そこへ、教室の隅の方でしゃべっていた男女10人くらいのグループがこちらへ来た。
「あたしたちも混ぜてもらえますかぁ?今そっちで今回の件についてみんなで考えてたんだけど、とりあえず起きてる人だけでも集まって話し合った方がいいかなって。あたしは佐久間澪。みおって呼んで」
それから、澪を筆頭として話し合いがてら自己紹介が始まった。
そんなこんなで最終的には全員起きて、みんなで円になって話し合う状態になった。
「王様、本気なのかなぁ」
誰かが言った。
「でもここまでしたんだからやるんじゃない…?」
誰かが答えた。
そこで気がついた。
1人だけ輪の中に入っていない人がいる。
彼女は、窓の縁に腰かけて外を眺めていた。
俺はそっと輪を抜け、彼女の元へ駆け寄った。
「あの、輪に入んないの?」
余計なお世話だとは思いつつ、聞いてみた。
彼女はこちらに背を向けたまま、大きくため息をついた。
「アンタ達さぁ、ばっかじゃないの?」
決して大きくはないが、低く鋭い声は教室中に響いて、みんなの耳にも届いた。
みんなの視線が彼女に集まる。
「王様の計画が嘘であろうと本当であろうと、見ず知らずの他人とおしゃべりして仲良くなる必要なんて全くないじゃない」
シン……
しばらくした後、ようやく誰かが口を開いた。
「…君、神原京香さんだね?」
ベリーショートな髪と中性的な顔立ちが特徴の彼女は、天久姫夏だ。一人称は「ぼく」を使う、男子みたいな女の子だ。
その問に本人が答えるまもなく、姫夏の隣にいた日向将生が言った。
「え、何で知ってんだよ。知り合いか?」
「いや、違うよ。ぼくは記憶力には自信があってね。王様から配信された参加者一覧を見たときにメンバーの名前は覚えたんだ。で、さっき出てこなかったのは神原京香さんだけだなって。」
「すげぇ…」
確かに凄い。が、神原京香(仮)はどうでもいいというふうに、ふんと鼻を鳴らし、呟いた。
「あたしが神原京香であろうと何であろうと、アンタ達には関係無いでしょ。」
これにはみんなムッとしたようだった。
「そんな言い方はねぇだろーが」
古賀祐希が反論する。
途端に、他のみんなの口からも不満が漏れ始めた。
古賀くんの言うとうりだよね、ちょー感じわるーい、名前も教えらんねぇとかアイツ何様だよ。
当の神原京香(仮)は、またツンとした顔で外を眺めている。その視線の先にはどす黒い雲の塊があった。