「お兄ちゃん、王様の配信、見た?」
妹の美沙に尋ねられ、俺はようやくテレビから目をそらした。
「…ああ。」
王様─KAI(キング人工知能)は、100年程前からこの国を支配し続けるコンピュータだ。一般に、『王様』や『KAI(カイ)様』と呼ばれる。
遥か昔の人類たちが開発した人工知能が、人間の目を盗み独自に進化を遂げ、人類を超える存在となったのが、KAIとその部下達だ。
人々は戦った。
しかし、人間のように無駄な感情を持たないKAI達には勝てず、コンピュータの支配下で生きることとなったのだ。
それからというもの、時折テレビなどの電気機器をジャックしてビデオメッセージが配信されている。
今回のものほどではないが、今までも刹那的な命令をいくつか下してきている。
「殺し合いだって。本気かな?怖いねぇ…」
中2になってもなお甘えん坊の妹が俺の背中にしがみつく。
いつもなら、うぜぇ、と押しのけるところだが、今日の配信を受けては、そんなことを気にしてはいられない。
こいつは本物だ。王様は、血を欲しがっている。
「コンピュータだからな。…全く、なんで残虐なんだ…」

ジジッ…ザーッ…

「!」
突然、先程配信を終えて切れたはずのテレビがついた。

『GAMEのルールは理解したかね…
さて…重大な発表だ…クク…
第1回…GAMEの参加者が…抽選の結果…決まった…』