「あの……っ、付き合ってもらえませんか!?」


「………」



電車を降りてすぐ、金髪が特徴的な彼を引き留めて、気がつけば初対面のひとに、そんなありえないことを言っていた。


出逢ってすぐ、付き合ってとかおかしいかもしれないけど、でも今すぐ彼氏になってほしかった。



「……べつにいいけど」


「え!? ほんとですか!?」



そして、まさかのオッケーがもらえた。


金髪に、鋭い目つきと、刃のように尖った口調と豹柄のジャージ姿の彼は、はっきり言えば、不良そのものだし、理想のひとじゃない。



メガネをかけた黒髪の学級委員のようなひとが、タイプのわたしが、どうして彼にこんなことを言っているかというと。



足腰の悪そうなおばあさんに、電車内で席を譲っていた彼は、一度は怪訝そうに断ったおばあさんに、


『席空けておくので、無理せず遠慮なく、座ってくださいね』


と、身なりに合わず言っていた。