【しあわせのにおい】





「ひなたちゃんのことが好きなんだけど。付き合ってくれないかなあ」

 去年同じクラスになって以来、ずっと片想いをしてきたひなたちゃんに告白した。

 放課後の誰もいない教室なんて、少女漫画でありそうな胸アツシチュエーションだった。のに……。


「え、無理、やだ、有り得ない」

 無理で嫌で有り得ない……。三拍子揃って断られた……。

「な、なんでっ! 理由は? そんなにおれのこと嫌い!?」

「じゃあ聞くけどさあ」

「うん?」

「なんでわたしなの? 和泉モテるでしょ? 一応バレー部のエースだし、背も高いし、黙っていれば美人で絵になるし。たまに綺麗な先輩とか可愛い後輩に告白されてるでしょ。隠れファンもいるみたいだし」

「確かに綺麗な先輩や可愛い後輩に告白はされるけど」

「……」

「でもみんな、ひなたちゃんじゃないじゃん」

「……」

 ひなたちゃんはしばらくジト目をしていたけれど、結局答えは、……。

「わたし、和泉の隠れファンを敵に回したくないんだ。ごめんね」