《南帆side》
梅雨入り前の五月下旬。
湿気で髪の毛が上手くサラサラにならなくてムカつくから私は好きじゃない時期。
あれから、斗樹はしつこく私に絡んでくるようになった。
たまにしか一緒に行かなかった登校もここ最近はほぼ毎日行くハメになってる。
“ついてくるな”と言っても彼は聞かない。
『お前に変な虫がついても困るからな』なんてバカげたことを言って。
会話も私から振ることはなくて、ずっと一人で斗樹が話している。
相づちだって、テキトーなのに斗樹は楽しそうに笑って話しているんだ。
ほんと、不思議というか…ポジティブすぎるというか…いつものことだから放っているけど。
「ねぇ、今日のバレーは南帆のチームに負けないから!」
私の隣でキャピキャピと今どきの女の子のようにメイクもばっちりで楽しそうにはしゃいでいるのは親友の來未。
そう、今日は球技大会。
クラスのみんなが一致団結して頑張る学校行事。
女子はバレーボールで男子はバスケットボール。
「來未は運動神経がいいから楽しそうだね」
彼女はダンス部に所属していて毎日が充実しているし、運動神経も羨ましいほど抜群。
「何いってんのよ!
南帆も普通に運動できるじゃん!」
「まあ、人並みにはね」
だけど、私は頭の良さよりも運動神経の方がほしかったな。
だって、スポーツしている女の子ってキラキラしてて可愛く見えるじゃん。
私もそんなふうに一度はなってみたい。
まあ、女の子らしくない私はそんなの叶いもしないけどね。