インターホンに人差し指を伸ばして……私は大きく息を吐く。
もう辺りはすっかり暗く、家の中から漏れる灯り。
夕飯時に迷惑かな……っていうのと、顔も見たくないと拒まれたらどうしよう……っていう、不安。
決して有り得ない展開じゃなくて、家の前に到着して数分。今だにインターホンを押すことが出来ずにいる。
正直、とても怖い。
怖すぎる……けど。
きっとここで引き返してしまったら、私は本当の気持ちを打ち明けられない。
相手を傷付けてしまうのを恐れて、またひとつ嘘を重ねてしまう気がする。
それは……だめ。
「はぁー」と、声に出すくらい大きな息をもう一度吐いて、私はとうとうインターホンを押した。
ピンポーン……と、音がする。そして、その後すぐにガシャガシャとノイズが走って。
『はい』
「あっ、すみません、高宮です」
聞き慣れた声に、ドキドキしながら私が名乗ると、
『ゆづちゃん!? ちょっと待っててね』
そう言われ、インターホンはすぐに切れた。