「今日からここが、原くんと木嶋さんの部屋ね。はい、これが部屋の鍵」

そう言ってあたしたちに鍵を手渡してくれたのは、担当者の松井さんという40歳くらいの男の人。

今日からあたし木嶋華(きじま はな)は、彼氏の原直樹(はら なおき)と同棲を始める。

「この後事務所に行って契約とか色々あるから、支度ができたら出てきて?自分は車にいるから」

「はぁい」

「わかりました」

あたしたちの返事を聞くと、松井さんは外へ出ていった。


「直くん、思ったより広くてキレイな部屋だね!」

「そうだな。松井さん待ってるから早く支度して行くぞ」

「あ、うん」

テンション高めのあたしに対して、直くんは冷静だった。

それもそのはず、生まれて初めて親元を離れたあたしに対して、直くんはちょこちょこ一人暮らしをしてきた過去がある、慣れているのだろう。

あたしは契約に必要な印鑑などをカバンに入れながら、部屋を見渡した。