「うわあ、すごーい!」




古き良き日本の伝統を感じさせる、大きなお屋敷を前に語彙力を失った私は、「すごい」ばかりを繰り返す。



うん、これは、すごいとしか言えないわ。剛の自宅並にすごい。


世界が違うというか、レベルが桁外れというか……とにかく、すごくすごい。



お屋敷を囲っている緑豊かな山の自然の効果なのか、心なしか清々しい気分だ。




「これまた、随分と立派なところだな」


「あ、もしかして……たかやん、こういうところに泊まるの初めてでちょっと不安?」


「ああ、そうだな。お前らがこんなすげぇ建物を汚したり壊したりしねぇか、すっげぇ不安だ」


「……うっ。そ、そうならないよう、ぜ、善処します」




な、なんだか、胃がキリキリしてきた。


たかやんがスマホで、正午過ぎの現時刻を確認しながら、無駄にプレッシャーをかけたせいだ!




周りにいる皆を見てみたら。



たかやんの心配が伝染して沈んでいた私をよそに、凛はいつも通りアイスを食べていて。


弘也と剛は、桃太郎をからかっていて。


重そうなリュックを担いでいる師匠は、真修や下っ端達とこのお屋敷の大きさに興奮していた。




皆のはしゃぎっぷりに、胃の痛みが増す。


善処しても、たかやんの不安が的中してしまった時は、全員で土下座しよう。弁償しろと言われたら、外国にでも逃げちゃおうか。