「十羽、入るぞー」



言いながら、病室のカーテンを開ける。



そこには、昨日と変わらない光景が広がっていた。



病室の真ん中にあるベッドの上で、十羽は身動きひとつせず眠っている。



相変わらず、か。



小さくため息をつくと、がさごそとフィルムの擦れる音を立てながら、大きな花束を胸の前で持った。



「おまえ、かすみ草好きだったよな。
これ意外とがさばるから、エレベーターでおっさんにめっちゃ迷惑そうな顔されたんだけど」



かすみ草の花束を見せるように、十羽の方に差し出すけど、当たり前のように返事はない。



俺は花束をベッドの近くにある小さなテーブルに置くと、パイプ椅子に腰掛けた。



「無視かよ」



頬をツンとつつきながらぼそっと呟いた時、ガラガラと病室のドアが開く音が背後から聞こえて来た。