「うっ!」

 突如、胃の中に入っていた飲食物が逆流して、気持ち悪さが押し寄せてきた。慌てて俺は口を片手で覆って走り、近くのゴミ捨て場にいってものを吐いた。



 胃液やどす黒い食べ物と一緒に、
涙がボタボタと流れてくる。


 クソ……。これたぶん、酒と煙草のせいだ。



 嘔吐物とゴミ捨て場の匂いが吐き気をさらに誘発してきて、俺は思わず、汚れてない方の手で鼻を抑えて、ゴミ捨て場から顔を背けた。


 ゴミ捨て場に来るんじゃなかった。



 気持ち悪い。どんなに吐いても、吐き気が収まらない気がする。


 どうやら俺の体は、自分の想像以上に酷く弱って腐り果てていたらしい。

 俺、……マジで死ぬかも。


「ヤバっ、誰かゲロってね?
キッタネェー」


 ゴミ捨て場の真横に建っていた大きな喫茶店から学生服を着た数人の男が現れる。その中の一人が俺の脇腹を殴った。



 男は不自然に口角が上がっている。ゲスい、見下すような笑みだ。


「うっ!?」


 俺は横向きに地面に倒れ、頭を思いっきり道路に強打した。



 ゴンッ!と鈍い音が道路に響き、あまりの痛みに、俺は両手で頭を抱えこんだ。



「ダッセ、……死ねよ」



 腹を蹴られ、さっきより下卑た笑みで暴言を吐かれた。そいつの取り巻きらしい残りの数人の男が俺の周りに丸まったティッシュなどのゴミクズを無表情で投げていく。


「う……っ!」


 俺の呻き声が道路に響いた。

 ゴミの匂いが、ますます俺の吐き気を誘発して、体調を悪化させる。


 涙がこぼれ落ちて、それはまるで、唾液のように道路にこびりついた。
 あーあ、ダッサ。
頭から血が流れてて、頭を押さえ込んだ腕が真っ赤に染まってくのが嫌でもわかった。



 悔しいけど、マジで男の言ってることが正論な気がした。



 吐いて苛められてこんな怪我するとか、マジでダサい以外の何者でもない。



 あぁ……死にたい。



 もう誰でもいいから、早く俺を殺してくんねえかな…。