* * *

「ワンタンメン一つと!」
「ネギ塩ラーメン。ってお前、もうすでに酔ってねぇ?」
「酔ってない!」

 ラーメン屋まで来た。実は相島と紗弥の最寄り駅は同じだ。駅まで一緒で逆方向に歩いて帰れるレベルの近さである。このラーメン屋は一人でもたまに利用する。

「…生ビールもそんなに得意じゃねーって言ってなかったっけ。」
「疲れてるときは大丈夫だし。」
「それで酔っ払うとか27歳大丈夫か。」
「年齢を言うな年齢を!」

 確かにお酒にはものすごく強いというわけではない。しかし、飲まなきゃやってられないのである。久しぶりのビールののどごしはいいと思えるくらいには疲れているし、年もとった。

「…へへ、美味しい。」
「酔ってんな、お前。」
「酔ってないってばー。」
「水くださーい。」
「聞いてないな!」
「聞いてるっつの。帰れなくなったら困るだろ。」
「帰れるもん。緊急時には相島さんいるし。」
「俺をあてにするな。彼氏をあてにしろ。」
「いないの知ってるくせに意地悪!」
「いないの知ってるからこそだろ。」
「自分はモテ男だからってさー。そういうところが嫌な感じー。」
「モテるかどうかで言えばお前もどっこいだからな。」
「でも結局誰とも続かないもーん。」
「だから、お前は男の趣味が悪いんだよ。」
「…私だって、ほんとのことが言えたらなって思ってるもん。」

 いつだって思ってる。似合わないなんて言ってほしいわけじゃない。確かにいわゆるできる女風を目指していたことは認める。今だって目指している。極めすぎてこうなったことも知っている。だからこそ、プライベートでは力を抜きたい。気を張っていたくない。もっと平たく言ってしまえば、甘えたい。そして甘えを許したい。