《side泪》


あたしは、夢を見ていた。

朝、念願の八雲に会えて、『おはよう』『やっと会えたね』『声が聞きたかった』。

伝えたいことを顔を見て、話せた夢を。


***


「んっ……」


「る……る、……いっ、泪!!」



名前を呼ばれて、意識がゆっくりと浮上する。

だんだんとハッキリしてくる意識に、あたしは目を開けた。

すると、あたしの顔をのぞき込む透お兄ちゃんと目が合う。



「ん……あ、れ……透お兄ちゃん……」


「おはよう、泪。あぁ、良かった……何日も眠るなんてザラなのにな、つい不安になって声かけた」


ホッとしたような透お兄ちゃんの顔が、窓から差し込むオレンジ色の光に照らされていて、ハッとする。


「お兄……ちゃん、今、何日、何時!?」


まだぼんやりとする頭で、何が起こったのか、必死に考える。

夕方を知らせる夕日の光。

バクバクと心臓が嫌な音を立てて、加速する。


「翌日の17時だけど……そんなに青い顔してどうかしたのか?」

「そ、そんなっ……」


考えなくたって、透お兄ちゃんに聞かなくたってわかってた。

ただ……認めたくなかっただけだって。