「…あら?
もしかして月星くんと付き合ってるっていう璃乃ちゃん?」

「…っ?!」





私の前に現れたのは昨日、月星と一緒にいた綺麗な女性だった。

どうして私の名前を知っているのか…





「…はい、そうです」





戸惑いながらも返事をする。

女性はにこっと笑って





「そう、良かった。
ちょっとね、お話したいことがあるの」





公園のベンチを指さされて隣り合わせに座る。





「月星くん、とても大変そうよね?
貴方はどう思っているのかしら」

「…え…?何のことですか?」





私がそう尋ねると、心配そうにする顔の口角が上がった。





「もしかして聞いてないのかしら、これのこと」





見せてきたのはある1枚の紙。

そこには


【松下月星 様
最近、芹澤璃乃って子と付き合っているようですが…何故彼女を選んだのですか?
到底釣り合っているとは思えないのですが】



背筋がぞくっと凍りついたみたいになる。





「こ、これって…」

「月星くん、こんなものが何枚も家に届いたら恐怖で仕方ないでしょうね?
貴方との写真が入ってたこともあったって。
本当に知らなかったのね?」





もしかして…これのせいで今まで私と距離を取ってたの?

どうして何も言ってくれなかったの?





「じゃあ…月星はこのこと相談して…?」

「ええ、そうよ。
きっと私しか頼れる人がいなかったんじゃないかしら?
ふふ、よく考えたらこんなこと彼女の貴方に言えないしね」





月星くんの悩みにも気付かずに…ねぇ?


とほくそ笑む。

上から目線の圧力に体が縮まり込む錯覚を覚える。





「それじゃあ私、これで失礼するわね?
その紙は渡しておくわ」





そんな声が後ろから聞こえた。

ただ地面だけを見つめていた私は彼女がどんな顔をして去っていったか分からない。


…ものすごく嫌な人、それがあの人の印象。