私は、あの世界から逃げ出したかった。
だからって、私が行きたかったのはお母さんとお父さんがいる天国で。


こんなよくわからない異世界なんかじゃない。




「戸惑うのも無理はありませんね。今、王さまは公務で忙しくされております。1時間ほどで落ち着きますからそれまではくつろがれていてください」

「くつろぐって言ったって・・・」

「なにか入用なものがあれば何なりと申し付けください」



畏まったジルの様子に、居心地が悪い。
執事だとか言っていたけど、そんな人も初めて見る。
本当にきっちりとした人だな。
ていうか、ピクリとも笑わないしまるで仮面でもつけてるみたい。
鋭いきりっとした瞳に射抜かれそう。




「と、特にいるものは・・・」

「畏まりました。私はお茶の用意をしてまいりますので、一度失礼いたします」

「は、はい」




お、落ち着かない。
なんなの。
もしかして夢?
夢を見てるのかしら。


この長い夢から覚めたらお母さんたちのところに行けたりするのかしら。