身体がゆっくりと傾いていくのを感じながら。
私は“その時”を待っていた。


パリン!
背中の方でガラスの割れるような音が聞こえたような気がした。




「ひな様!!」




そんな叫び声が聞こえたその次の瞬間、私の腕が何かによって掴まれた。






「――――っ!?」




身体はもうテラスの向こう側に落ち、手を掴まれた状態で私の身体はテラスからぶら下がっていた。
誰・・・?と顔をあげると、私の腕を掴み苦しげに眉を寄せているジルが見える。


ジル・・・。
いつの間に部屋に来ていたんだろう。
全く気付かなかった。




「なにをなさってるんです!」

「っ、放して!放し・・・、放してよ!」





私は身を翻しどうにかその手から逃れようとする。
でも。




「放しません!いい加減にしてください!命をなんだと思ってるんですか!」