動揺して、戸惑って、混乱して。
私は写真を持ったままその部屋を飛び出していた。


自室に戻り、バクバクとうるさい心臓の音を感じながら。




「ジルの好きな人が・・・」




敵うはずがないと思った。
私の中でお母さんは完璧で、誰よりも大好きな人だから。



ジルって確か、27歳だったはず。
お母さんとじゃ、年齢が合わないって思ったけど、この世界とあの世界とでは移動する間に時空の歪があるって言っていた。
だから、王さまもおじいちゃんのはずだけどあんなに若いんだった。


お母さんがいなくなったのは、10年前・・・。
ジルは当時17歳くらい。
そんなころから、お母さんの事を好きだった・・・?

それは、今も?




気になるけど・・・、知りたくない。
だって・・・、10年もの間一人の人を好きでいるなんて。


それが、お母さんだなんて。




知りたくなんて、なかったよ。