ある日で午後。

慌ただしく入稿日が過ぎ、フェア企画も当日を待つだけになった今日この頃。

あちらこちらに、生きる屍が転がる編集部。

そこにはただ1人だけデスクワークに勤しむ真面目な高橋さん。

あの水城さんでさえも、月刊誌をアイマスクがわりに顔に乗せ椅子にのけ反っているという超多忙な日々を乗り切ったあたし達には喋る気力も無かった。



『…どこかに行ってしまいたい』


蚊が鳴くように小さく誰かが呟いた。

皆、心の中で右に同じくと思っているだろう。



「そう言えば、桜の時期も終わっちゃいましたよね。毎年友だちとお花見やってたんですよ、あたし」



高橋さんは、誰が呟いた言葉かも分からないそれに律儀に返答をしている。


お花見かぁ。随分そんなイベント事はしてないかぁ。
お花見おろか、夏祭りだって海だってプールだってクリスマスだってここ何年としていない。

まぁ、別にリア充向けイベントをしたいってわけではないが、何だか損してる気がする。


気がするだけで、いざっやるか?と言われたら面倒なのでする気にもならないのが正直な気持ちなんだけれども。