ケータイ小説 野いちご

気まぐれ魔女の恋愛模様?

辺境伯と気まぐれ魔女
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しばらくすると、ダージさんがミスマリの根を持ってきたから、隣室に薬を作る道具を用意してもらう。

すり鉢に、火をつけるランプに、器を固定する鉄の三脚。いくつかのガラスの容器。

次々にテーブルの上に並べられていくのを確認して、木の根のように固いミスマリの根を削っていたら、レイル殿下が誰もいなくなったのを見計らったかのように部屋に入ってきた。


「……君は、何をしているんだ?」

「薬作ってるに決まってます」

「そうだろうが。あちらに椅子があるだろう」

ドレスのまま床に布を敷き、その上に座って根を削っている私に、彼は少し戸惑っているみたいだ。

「作業するには、慣れた体勢の方が楽なんです。だから、ドレスは汚れますって断ったんですよ」

ガリガリ削っていると、彼はしゃがみ込み、両手を差し出した。

「……なんですか?」

「その刃物は慣れていないようだ。俺が替わりに削る」

確かに慣れない刃物のせいで、あまり上手く削れていはいけど……。

「殿下のすることではないです」

「気にするな。今は俺の身分は辺境伯だ」

「いや、一緒。王族も辺境伯も、身分がすごーく高い人なのは同じです」

「そんな“身分”には、君はあまりこだわりがなさそうだがな。いいから貸せ」

そう言われて、おとなしくナイフとミスマリの根を殿下に渡した。

じゃあ、私は他の作業をしようかな。

座る場所を明け渡し、ロラの実とサンサ草を選んでからすり鉢に入れ、すりこぎ棒で潰していく。

独特の草の香りが立ち上り、私が薬草を擦る音と、殿下がミスマリの根を削る音だけが部屋中に充満していった。

窓も開けていないのに、時々ふわりと風が起こって心地良い。

薬を作っていると。とても穏やかな気分になるのは何故だろう。

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