ケータイ小説 野いちご

気まぐれ魔女の恋愛模様?

辺境伯と気まぐれ魔女
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石造りの城の中は、どこかひんやりとして薄暗い。

明り取りの窓は頭上高くにあるけれど、とても小さくてあまり意味を成していない。

変わりに魔術の炎が灯されたランプがあちこちに吊るされ、それが室内を照らし出している。

ホールの中央には大きな壺に華やかな花が活けられ、壁際に家紋入りのタペストリー。それ以外に装飾品らしいものは見当たらない。

男は黙って勇ましく、ぐらいな勢いで実質剛健を謳っていそうな内装だ。

広い階段が正面にひとつ、その両脇にふたつ、玄関脇にも左右に別れてふたつ……合計5つの階段があって、どこがどこに通じているのかわからない。

「ああ。この城はかなり入り組んでいるから、迷子になるなよ?」

「……そうですか。でもまぁ、長居するわけじゃないし」

でも、住んでいる人にとっては大変そうだなぁ。

そう思っていたら、黒いフロックコートを着た白髪の男性が近づいてきた。

「お帰りなさいませ、ダージ医師。薬師の方をお連れになられたとか」

そう言って彼は私を見ると、温かい笑みを浮かべる。

「お初にお目にかかります。この城で執事をまとめております、ロレインと申します」

「初めまして。フィリシアと申します」

ペコリと頭を下げると、ますますにこやかな笑みが返ってきた。

「フィリシア・ローレル嬢?」

「え……あの? そうですが」

私の正確な名前をどうしてご存知ですか?

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