ケータイ小説 野いちご

気まぐれ魔女の恋愛模様?

辺境伯と気まぐれ魔女
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村の生活は、単調で和やか。

陽の光とともに起き出して、それから各々の仕事に取り掛かる。

毎日変わらないルーティンワークだけど、平和な証だよね。

そう思いつつ井戸から水を汲み上げて顔を洗うと、近くの岩に座って髪を梳かし始めた。

「髪伸びたよね〜。バッサリ切っちゃおうかな」

持ち上げながらポニーテールにするのも腕が疲れてくるし、振り返った瞬間に遠心力で、頭が持って行かれるんだよね。

「やめて。うちの旦那が泣くから」

ミリア姉さんが淡々と呟いて、桶に水を汲むと、まわりのオバさんたちが笑いだす。

「サウスはフィリィを猫可愛がりしてるもんね。将来、フィリィがサウスの嫁になるかと思ってたもんだよ」

「冗談でもやめて。だいたいサウスの為に髪を伸ばしているんじゃないし」

怒ったようにして言うと、和やかにしていた皆の笑顔が、ギョッとしたように固まった。

彼女たちの視線が、私の顔より上にある。

何だろうと顔をそのまま上げると、鋭い翠色の目と合った。

「うきゃぁぁあああ!」

思わず叫んでミリア姉さんに飛びつくと、彼女の手が滑って桶から水がぶち撒けられる。

その水害にあったオバさんたちが悲鳴を上げて、家の裏で作業を始めていたオジさんたちが剣を片手に集まった。

皆の視線にさらされて、無表情な端正な顔が凍りついたように固まっている。


今日は前よりも豪華な騎士の制服だな、と、気づいたのは沈黙が落ちてからだ。


「……驚かせるつもりはなかったんだ」

両手を上げて静かに口を開いた彼に、村人皆が呆れた顔をした。

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