手を握られた。今回は「手を繋ごう」とは言われなかった。

「なんでそんなに俺のこと知ってるの?」

「だ、だって結構噂になってた……」

「俺の噂覚えてたんだ」

すこぶる上機嫌である。意味が分からない。
どこかに慧斗の取り扱い説明書落ちていないかな。

手を握られたまま歩いていく。後悔を覚えたわたしの気持ちを返して欲しい。

「噂だから、女子の噂が耳に入ってきただけで」

「俺も美衣ちゃんが中学と高校のときに告白されたの知ってるけど」

「は」

信じられなくて言葉が漏れる。
どうして知ってるのだろう。夏菜子にも話さなかったことなのに。