コン…


コン…


コン…


コン コン…





ガラスのビー玉が、

一段一段

階段を跳ねながら落ちてくる…






私は、深夜に目を覚ました。
あまり動きたくない。このまま夢の世界に戻りたい。


が…


トイレに行きたくなって、仕方なく布団から這い出した。




闇に包まれた家の中は、
シーーーーンという音が聞こえてくるほど静かだった。



トイレの前には、2階へと続く階段がある。

恥ずかしい話だが、
私はトイレの扉を完全に閉めるのが怖くて
いつも少しだけ扉を開けていた。




コン…


コン…





扉の向こうから、突然音が聞こえた。

ビクッと体が強張る。




「……ビー玉?」


2階の部屋には、ビー玉を集めた瓶がある。

ラムネの瓶に入っていた水色の玉、中に錦の模様がある玉、キラキラ輝くオーロラの玉、などなど。
見ているだけでも飽きない、たくさんの美しいビー玉だ。


コン…

コン…

コン……




でも、何で……

コン…

コン…

誰も居ない2階から落ちてくるの?



コン…



コン…

コン…コロロ…


トイレの前まで転がりつくと、



コン…

コン…



確認したかのように、
次の玉が落ちてくる。


コン…

コン…



扉の向こうの階段の上、

誰かいるの?

誰がいるの?








…そうだ、きっと。


出しっぱなしのビー玉が、
たまたま、転がって、階段から落ちてきたのだ。


たまたま。偶然。そう、たまたま……


私は自分に言い聞かせる。




ーービー玉の瓶、最近出した?


自分の肯定を否定する、
そんな考えを否定する……


たまたま…偶然…たまたま…




私は勢いよく扉を開けた。




足元にはビー玉が2つ、転がっていた。



そして、また


コン…

コン…


コン…



ビー玉が階段を降りてくる。



見たくない

見たくない

見たくない





そう思っていたはずなのに。




私は階段を見上げてしまった。




そこにはもちろん、

誰も居ない。




視線を戻し、私は小部屋へ駆け込んだ。




頭まですっぽり、布団を被る。




コン…コロロ…


ちょうど3つ目のビー玉が、1階に着いたようだった。