会場は森の中にある、パーティ会場だった。
広い天井、明日は昼食会も兼ねるであろう立食の準備もされていた。
結婚式のようだ。


絢香は、少し離れた所から、晃の演奏を確認する為に見ていた。
ピアノの周りには、演奏者らしき人が10人ぐらいいた。
その中でバイオリンを持った、妖艶という言葉がぴったりの女性が、晃の方へ向かって来るのが見えた。
(ー きれいな人。)

「晃。」
その人は、笑顔で言った。
「マリカ…。」
と呼んだ気がした。

マリカと呼ばれた、その女性は、すっと横に並び、何かを話しているようだった。

晃は笑っていた。

(ー その人には、ああやって笑うんだ。)
絢香は、ただその様子を見ていた。

マリカは、晃の肩に手を乗せ、耳元で何かを囁いているようだった。

(ー ただの知り合いではないな。女の勘は大抵あたる。)

絢香は、大きくため息をついた。

(ー あの人は、ああ言う人がいつも周りにいるんだろうな、もう、いいや。仕事、仕事。)

絢香は、ギュッと一度目を閉じ、息を整え、演奏に耳を傾けた。