ケータイ小説 野いちご

真実の愛に気づいたとき。

2.人の心を裸にする人



彼と出逢ってから、私は毎日のように彼の姿を探していた。


運命的と言ってもいいあの十字路での出くわし方は、まるで少女漫画や月曜9時のドラマのようだ。


まぁ、正確に言うと出くわしたのは無銭飲食未遂の冴えない男性なのだけれど。


今日も十字路で彼を探す。


こんなところに立っていたって、やって来るわけなんてないのに…何バカなことしているのだろう。


まさか…と思い、彼が姿を消した方向へと足を進める。


この先ってビジネスではない方のホテルが何件もあったり、よく暴力事件が起きたりするから行ったことがない。


同じ市なのに、一歩足を踏み入れるとまるで別世界。


映画でよくある、細道を抜けると化け物の世界といった感じだ。



普段の私なら興味すら示さないが、今日は吸い込まれるように歩いていった。


徐々に街並みが変わっていくのがわかる。



キラキラ光る建物がとても眩しい。


一人でこんなところを歩く女子大生なんて私くらいだろう。



初めて見る世界に戸惑いを感じながらも、右、左と交互に目を移しながら奥へと進む。


すると、遠目に建物間に佇むシルエットが視界に飛び込んできた。


すらっとしたそのシルエットが煙を吐き出す。


一歩、また一歩と近づいて行き、恐る恐る声を掛けた。


「あ…あの…」


シルエットが段々と鮮明になっていき、顔がはっきり見えるところまで来た。


その人物が私の方に顔を向けた時、初めて会った時と同じ胸の高鳴りで、私は確信を得た。


ずっと会いたかった人だ…


あまりの嬉しさに顔が緩みそうになったが、彼の冷たい眼差しに一気に血の気が引いた。


「んだよ。何でここにいんだよ」


あ、そうか。


会いたかったのは、私だけだったんだ。


そんなの当たり前じゃん。


なのに、どうしてショックを受けているのだろう。


全部全部、一方的だったじゃん。



彼のその言葉に何も返せない。


パチンコ屋の音や酔っ払いの騒ぎ声、街のガヤガヤした音だけが私たちの間に流れる。


彼はタバコの煙をふっと吐き出し、再び口を開いた。


「どうして一人でこんなところまで来てんだよ」


私と目を合わそうとせず、前をじっと見ながらそう言った。


"あなたに会いたかった"


そんなこと言ったら、きっと困るだろうし、迷惑だろう。


大体彼に会えたところで何を喋るかなんて考えてもいなかった。


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