そうしてひと月。
周りのみんなが既に内定もらっている中でも、結局やりたいことも見つからず。


「はああ~どうしよう」


スタッフルームで飲みかけの紙パックのオレンジジュースを机に置いて突っ伏す。


「どうした??悩みごとなら聞くぞ」


ひとつ上で同期のバイト、唯一親しいと言っていい、香芝栞(カシバ シオリ)さん。


女の子にしては160㎝と背が高い、バレーしてたとか言ってたかな。


顔立ちがはっきりした美人。背中まで伸びたサラサラの黒髪を後ろでシュシュで無造作に束ね、さばさばした性格で、可愛がってくれる。


店でももちろん、私個人的にも信用できる人だ。来年大手の企業に就職が決まっているらしい。


「就職おめでとう…私は難民になりそうですよ」


「まだ当て、ないの??やばいじゃん!!」


「…そうなんですよ…」


「いっそ、永久就職、目指そうか??」


あはは、と笑う。


「もっと当てないですよ~」


泣きそうになる。


「彼氏もいないの!?ああ、だから、こんなバイト漬けなんだ??勿体ない!!可愛いのに!!合コンでもしようかって言ってもまずは就活だしね~」