結局マスクをしたまま一言も口を聞いてくれない。


「…あの、ペットシッターのお仕事って、どういう…」


言っている間にひとつのマンションの駐車場に着いた。比較的新しそうな、中規模の10階建てほどの建物だ。


無言で車から降りる董坂さんに着いて出る。
時間は10時になろうとしていた。


マンションの5階。
インターホンを押すと30代の女性が出た。


「お待ちしてました。あらっ??新人さん??」


お洒落なワンピースでメイクもバッチリな女性は、これから出掛けるようだ。


「はい。今日からサポートしてもらうことになりました。橘です」


にこやかに、ものすごく物腰柔らかに応えた。


さっきまでにこりともせずに無表情に運転してたのに。
まるで別人だ。