思わず立ち尽くしてしまう。


 理人さんの目を正面からきちんと受け止められず、目が泳ぐ。


 なんて、わたしは馬鹿なのだろう……



 あの場所は学園にとっても秘密の場所であることはわかっていた。


 …でも、こころのどこかこのことを知っても理人さんは許してくれると思っていた。



 そして、そうはいかないこともわかっていた。



 だから、少し躊躇さえしていた。その矛盾と混沌が入り混じった悩みは理人さんの絵によってわたしの中から波が引くように裏へと引きずられ、代わりに喜びが打ち寄せてきた。



 こんな状況で、なにを言えばいいのか……


 様子を窺うように、理人さんを見る。


 その目はまっすぐとわたしを捉えていた。



 そこでわたしは決意する。



 久我君のことを知られないために、わたしは秘密に嘘を重ねさらにウソを重ねることを……