赤い糸が、もし本当に存在するとして。

うまく手繰り寄せられるのなら、それは運命の相手で。



途中で結び目ができたり、互いに逆方向に引っ張ろうとしてぷつりと途切れたり。はたまた、結び目を解こうとしてあっけなく切れてしまったのなら。

──それはきっと叶うことのない、永遠の恋だ。



【Side Ayase】



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「んー、涼しい……」



炎天下に身を投じて、歩くこと約20分。

平日でも十分賑わいを見せる大型ショッピングモールにたどり着けば、肌に感じるのはひやりと冷房の感触。



隣にいるひのが、くすりと笑って俺を見上げた。

どうした?と聞けば、ふるふると首を横に振るくせに笑みは隠さない。



「なんだよ」とひのの髪を梳くように触れれば、つい数秒前まで外にいたせいで指先に感じるのはこもるような熱。

……やっぱり、夏、だな。



こいつと別れたのは冬だったけど、夏の時点ではひのの脳裏に薄らと別れの文字があったのを、なんとなく俺は悟っていた。

……だからちょうど、あれから1年だ。




「ここにふたりで来るのひさしぶりだなと思って」



「……そうだな」



ほかの奴らとは何度か訪れているものの、ひのとこうやってここに来るのは付き合ってた頃以来だ。

……別れたはずの俺らが、いまここで一緒にいる理由。それは。



「ストラップにする?

それとも、ネックレスとかのアクセサリーとかがいい?」



万理が言い出した、『音にふたりの仲の良さを見せつけよう作戦』とかいう、胡散臭いネーミングの計画のせいだ。

俺らの関係は一度終わってるせいで、どう考えても燃え上がってる恋の真っ最中には見えない。



そこで、恋人らしいことをしろと言い出した万理。

音に見せつけるためにも手っ取り早くお揃いのものでも買っておいでよ、と笑顔で見送り出された結果、放課後俺らはここにいる。



……声をかけたら存外あっさり「いいわよ」と言ったひのには驚いたけど。

たとえば俺と"お揃い"だったとしても、彼氏との仲が悪くなるわけではない確信があるんだろう。