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「……あのさ。

一体いつまで拗ねてんの?」



ソファの上で。

俺に背を向けてスマホをいじってる妹に声をかける。……けれど完全に無視されるからちらっと画面を覗き込んだら、ひのちゃんに俺への愚痴を延々と送信している万音。



「『万理なんか嫌い』、ね」



「、」



「……ふーん?」



両親は俺らがただの兄妹ではなく、恋愛関係にあることを知ってる。

はじめはなんとも言えない顔をされたけど、「まあ仕方ないわね」と一言で済まされたから一応公認。そんな両親も仲は良く、休日はふたりでデートに行ったりする。



だからせっかくふたりだけの休日だっていうのに。

……これじゃあ何にも楽しくないんですけど。




「……倉庫でも行ってこようかな」



今日もあいつと一緒にいるはずのひのちゃんが律儀に細かく万音に返事してくれてるってことは、今日は綺世の機嫌もいいんだろうし。

つぶやいて立ち上がり、リビングのドアノブに手をかけたところで「万理」と名前を呼ばれた。



「……なに?」



「……なんでもない」



行って欲しくない。

でも謝りたくない、っていう万音の心の中がたやすく読み取れるぐらいには俺らの距離は近い。……まったく。



「言いたいことあるならちゃんと言ってよ」



万音の隣に腰掛けて、じっと見つめてくる彼女に向かって腕を広げたらぎゅっと抱きついてきた。

首筋に顔を寄せる万音。ひのちゃんと比べれば万音は背は高いけど、俺から見ればやっぱり小さい。