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「あああ、完全に遅刻……!」



「……良いだろ。

どうせあいつらも、俺らのことなんか忘れてふたりで幸せに浸ってやがるんだから」



「それだとダブルデートの意味ないじゃない……!」



呑気な綺世の手を、ぐいぐいと引っ張る。

昨日は綺世の誕生日で1日彼と一緒に過ごしたのだけれど、色々と楽しんだせいで疲れたのか遅くまで眠ってしまっていて。



今朝も迎えに来てくれた彼に、「ちょっと待ってて!」とお願いして待ってもらったものの、ダブルデートの待ち合わせ時間にはどうやっても間に合わない。

特に万理はダブルデートに毎回散々反対しているから、遅刻したら絶対冷たい視線を向けられる……!



「そもそも、クリスマスになんでダブルデートなんだよ。

俺はお前とふたりで過ごしたいって言っただろ」



ふたりで過ごすと身の危険しか感じないからです。

付き合った直後の夏休みならまだしも、付き合ってから軽く3ヶ月以上。お家デートの誘いには正直うなずけない。




「……俺も色々溜まってんだけどな」



「……規制しなきゃいけないようなこと言わないでね」



「ふ。たとえば……

そうだな。まあ、俺にしか見せられない表情は、さっさと見ておきたいな」



色々我慢させてるのはわかってるけど、まだ無理……!

わたしの耐性がそこまで無いからやめて……!と。



ふたりで、田舎なのを良いことにイチャイチャしながら駅まで向かう道を歩いていたら。

目の前から歩いてきたすごく綺麗な女の子に、完全に視線を持っていかれる。思わずふざけた言い合いを止めて、まじまじとその子を見てしまった。



「あの……すみません」



キャリーバッグをカラカラと引いている綺麗な女の子。

もう片方の手はまだ小学生ぐらいの男の子と繋がれていて。もうひとり、かのちゃんとそう変わらないであろう年齢の女の子が、綺麗な女の子の隣にいる。