.





.

*

:





「乾杯〜っ」



──カツ、と。

わずかに音を立ててぶつけたグラスに口をつければ、しゅわっと広がる炭酸が消えていく。その様が、燃えるような夏が終わる姿を映したようで、すこしだけさみしい。



……まあ夏休み終わっちゃって、もう9月なんだけどね。

どこの学校も夏休み明けすぐに文化祭の準備をはじめていたせいで土日の予定が合わなくて、ようやく落ち着いた今はもう9月後半。



完全に夏は終わって秋です。

さすがに半袖じゃ寒いなって思うぐらいには秋です。



──わたし、倉敷ひのは。

本日、正式に百夜月7代目の姫へと復帰しました。



「ねえねえ、ひの。文化祭どうだった?」



オレンジジュースの入った紙コップを手にわたしのもとへと寄ってきた音ちゃん。……改め、万音。

連絡先を交換して、綺世と万理に内緒でこっそり遊びに行ったんだけど、色々話をしてすごく仲良くなった。




まあバレたけどね。バレて「俺らに許可なくふたりで遊びに行くの禁止な」って言われたけどね。

反省なんて見せずにまた万音とふたりで遊びに行こうって計画立ててるけどね。



「んー、普通の文化祭だったわよ。

わたしのクラスは言ってた通りカフェだったけど」



圧倒的に女の子のお客さんが多かった。

だってそうよね。わたしのクラスに麗しい見た目の百夜月幹部が全員揃ってるのよ。めんどくさがって裏方が良いと言っていた万理も、結局ウエイターやらされてたし。



いいなあ、とつぶやく万音に、約束していたソレをこっそり手渡す。

逆にこっそり手渡してくれたソレをお互いに確認して、顔を見合わせてにっこり微笑み合っていれば。



「ひのちゃんいま、万音になに渡した?」



「……逆にお前は何をもらったんだ」



双方の彼氏様の声が飛んでくる。

え、いまふたりともこっちに背向けてなかったっけ?しかも下っ端の子と話してなかったけ?なんで見えてるの?