いつかの、

問いかけへの答えは「いいえ」だった。



ただそれが正しいのか、間違っているのか。

俺にもわからないんだから、きっと誰にもわからない。



【Side Miya】



.





.

*

:





『……もしもし、』



電話の向こうから、ほんのわずかに気だるげな声。

どう考えても青春を謳歌している女子高生のものとは思えないそれに、無意識に口角が上がる。いつものゆるい声で返したら、すぐさま電話を切られそうだ。



わずかな隙間でも「切っていい?」と言われかねないから、ひのが口を開く前に言葉を発する。

……夏真っ最中だってのに、今日はやけに肌寒いな。



「ひの、今ひましてる?」



いつだったかのシガレット風菓子を持つ左手に視線を落とせば、昔誕生日プレゼントでもらったアンティーク調の腕時計。

心臓が脈を打つスピードとほぼ変わらない調子で動く金の秒針が、月明かりできらりと煌めいた。




『……することはあるけど、

どれも急ぎじゃないから手は空いてる』



「んじゃあ、今からこっち来れねえ?

百夜月の倉庫の最寄り駅からちょっと行ったところに公園あるだろ〜?そこいるんだわ〜」



『公園……? ああ、』



時刻は、19時過ぎ。

正直、迷惑な時間に連絡してる自覚はある。別に相手はひのじゃなくてもよかったんだけど、と返事を待っていれば小さく肯定の返事がかえってきた。



「……来てくれんだ」



『みやが、わたしに電話かけてくるときって大抵疲れてるときじゃない』



「はは、そうかもな」