––––むかしむかしあるところに、平和をこよなく愛す姫がおりました。


姫は、それはそれは爽やかな隣の国のチューリップ王子に恋をしていました。


しかし、ある時。


王子様が他の国のお姫様と結婚することを知ってしまったのです。


姫は酷く落ち込みました。


そんな時、金色の毛をしたオオカミが現れてこう言いました。




––––『俺のこと、好きになればいいじゃん』



…………は?



首を振るお姫様に、金色の毛をした狼はなおも迫ります。



––––『言うこときかなきゃ食べちゃうけど、いいんだ?』



……待て。


待て長瀬。


こら!オオカミなら待てぐらいできるでしょ!!


え?犬じゃない?


そんなの知るか!


オオカミの––––長瀬の顔がゆっくりと迫ってくる。



ダメッ…!


長瀬!



お願い待って。


キスはもう…………





「だめーーーーっっっ!!!」



–––––––ゴンッ!!



つむっていた目を大きく見開けば、見慣れた自室の風景が飛び込んできた。


だけど、全ては逆さま。


そして、床に打ち付けたとみられる後頭部がジンジンしている。