こんな時間だから校舎には誰もいないみたいだ。

「宮」と彼女を呼ぶ美鈴君の声がはっきりと聞こえて、私達は静かに歩き出した。

背後からは話し声が聞こえたが、遠くに行くにつれて声すら届かなくなった。

それでも歩き続け、ついた先は立ち入り禁止のはずの屋上。

「ーーえ、由李ちゃん!?」

「わ、たし……私が聞いたからっ!」

相良君は突然泣き出した私に驚いて、戸惑いつつ、優しく背中を擦ってくれる。

「ん?」と優しく先を促されて、私の涙は止まらなくなった。

「私が、宮ちゃんと美鈴君の話を聞きたがったの……美鈴君がいるなんて、思わなくて……」

「うん、それに関してはむしろ俺達が悪いから」

「……あ、二人を責めているわけじゃ!」

「ふっ。分かってる。意地悪な言い方した」

焦る私に、けらけらと場違いに笑う相良君に「もう」と怒りながら、内心は凄く救われてしまった。

ぽつりと、「ありがとう」と呟く。

聞こえないと思ったのに、相良君はにっと笑って「どういたしまして」と言った。