「それは、変わってしまったってこと?」

「そう、だね」


「どんな風に……」

「当時の黒蘭は、極悪非道、残忍冷酷……。言い伝えに嘘はないけどさ。なにも無差別に人を傷つけてたわけじゃないよ。黒蘭が手を下すのは、その罰の重さに十分値する凶賊な連中だけだった」



……ええと、つまり。


「悪い人たちを裁いてた、みた、いな?」


「裁くって言い方はやさしすぎるな。法の目をかいくぐって悪行を繰り返す連中を、法を犯してでも排除する。これが黒蘭の在り方。……昔、のね」



昔、という部分を強調して、苦笑い。



「もちろん人助けとか関係なく法に触れることはたくさんやってた。立派なヤク──“そーういう組織”だからね。流れてる血は根っからの極道だ」


「それじゃあ、本多くんも、そういう人だって言ってるように聞こえる、けど」


「そーだよ。言ったろ、手ぇ切ったら青い血出てくるって」



思わずごくりと息をのんだ。
なんと返したらいいのかもわからず、次の言葉を待つばかり。


「俺の通ってる西高は不良校として名高いでしょ。 それってさ、黒蘭がずっと西区を支配してた名残なんだよな」