放課後の薄暗い教室に、着信音が響いた。
机の上でぼんやりと光っているスマホを見つけて、ためらいながらも手を伸ばした
──直後。
「ごめん、それおれの。触んないで」
静かなのに、冷たく背中を突き抜けてくるような声に身体が固まった。
ドッ…と、心臓だけが激しく跳ねあがる。
気配なんて──なかった。
「あー、机に置き忘れてたのか。見つかってよかった」
あたしが伸ばしかけた手の先にある"ソレ"を掴んだ彼は小さく息を吐き。
次の瞬間、にこりと明るい笑顔を見せた。
「相沢さん、まだ残ってたんだ?」
声色が変わった……というよりは、いつもの声に、“ 戻った ” 。
その笑顔に似合う、穏やかで優しい響き。
今あたしの目に映っているのは間違いなく
──クラスメイトの、本多七瀬くんだ。