窓ガラスに映る街灯りが次々に後ろに流されては、視界から消えていく。
宵闇(よいやみ)色のインプレッサの後部座席でしばらく無言だったアタシは、運転手に呼び掛けた。
「ねぇ、蒼葵(さき)」
「何かな、禾楓ちゃん?」
ああっ、やっぱりとぼけてるっ!
ってゆーか、いくら義理とは言え、妹をちゃん付けしないでと何度言ったら……。
まあそれを言ったらアタシも義理の兄を呼び捨てにしてるのだけど。
「お願いだから、アタシのケータイにかかってきた電話に勝手に出て、相手が女の子だったからってナンパするそのクセ! いい加減にやめてっ!」
「禾楓ちゃぁん、あたしぃ、ナンパなんてされてないよぉ?」
助手席の少女が、蒼葵に食ってかかるアタシに横槍を入れて来た。